【Once again to the Rider】 Vol.3


最新『W』は原点のW1から、どう進化した?

文:北岡博樹

原点となる650-W1と最新W800 STREET/CAFEはどう違う?最新と最古の『W』に同時に触れることで、見えてきたものがあった。旧車の味わいは素晴らしい。けれども今の時代、モーターサイクルはそれだけじゃ成立しないということを思い知る。

  ヘリテイジ『W1』に乗るということ
本物のヴィンテージ・モーターサイクルには言葉にできない快感がある。

それがカワサキが世界市場へはじめて打って出た、金字塔とも言える1966年製の『650-W1』なら格別だ。

そんな伝説の名車に、きちんと整備された状態で乗るという奇跡のようなチャンスがあった。

エンジンに火が入った瞬間に、機械としての『強さ』を感じさせるサウンドが轟く。

理由もなく、なぜか胸が熱くなる……

同時に右足でのシフトチェンジ、左足ブレーキという操作への緊張感を感じつつ、そっとギアを1速へ。

そして、いくつものことに驚いた。

その中でも最大の驚きは、エンジンが思ったよりもスムーズに回ることだ。

原点の『W』は、もっと荒々しい暴れ馬なのかと思っていた。

けれど、まるで違う。

半世紀も前のエンジンとは思えない高性能感。

そして、優しさすら感じられるフィーリングだったのだ。

迫力のある排気サウンドと豊かなフィーリングが溶け合う走りに、これが時を超えて愛され続けるW1の魅力か!? と感激する。

ほんのすこしの試乗。それは本当に貴重な体験だった。

でも同時に、それはあくまで『旧車』なのだ、ということも痛いほどに思い知ることになった。

貴重な車両だけに、慎重に、大きくマージンをとっていたにも関わらず、ドラムブレーキ特有の空走感に驚く。

フレームだって現代のバイクに乗り慣れていると、剛性不足は否めない。

それらは50年以上前の設計なんだから、当然のことだろう。

それでもこの時は、新型W800 STREETとCAFEを走らせた直後だったこともあり、あまりの差の大きさが衝撃だったのだ。

  技術の進歩って何だ?
同じ場所を、同じように走らせる。

新型W800シリーズは、クラシカルな装いからは想像もつかないほど自由自在だ。

最新技術による新設計ダブルクレードルフレームは、エンジンのパワーを完全に受け止めている印象。

同じくダブルクレードル方式とはいえW1のそれとは完全に違うものなのだと実感する。

フロントタイヤが18インチ化されたことによる、ロードスポーツ顔負けのスポーティな走り。

イメージ通りに速度をコントロールできるブレーキ。

半世紀という時間は、モーターサイクルをこれほどまでに進化させるのか……

それは、ボクたちの持つ感覚で『普通に走る』ということかもしれない。

でも、それだって半世紀以上の歴史の中で培われた技術の積み重ねによるものなのだ。

そのことにW1と新型W800シリーズを同時に走らせることで気がついてしまった。

『そんなの新車なんだから当たり前だろ!』 と安易に思っていた自分が恥ずかしい。

安心して走れる性能と安全性、そして機械としての信頼性。

新型W800シリーズには、まず何よりもボクたちのような一般のライダーが「モーターサイクルを楽しめること」が大前提としてあるのだ。

旧車にしかない味わいは確かにある。

でもそれと同じ水準で、旧車には望めないものも絶対的にあるのだと痛感した。

  新型W800シリーズは、そこからさらに上を望む
そのうえでW800 STREETとCAFEが素晴らしいと思うのは、この2台は、そこからさらに『上』を目指していること。

ひと昔前だと電子制御インジェクションのエンジンフィーリングには味がないなんて言われていたけれど、それも今は昔。

新型W800シリーズを走らせれば、360度クランクならではの振動と躍動感あふれる走り、バーチカルツインらしいサウンドに包まれる。

もはやキャブレターである必要性は感じない。

そして、これだって日進月歩する『技術』の賜物だ。

ブレーキは黒のインナーローターに溶け込ませながら、さりげなくABSを装備。

今どきABSがあって困る、というライダーはまずいないだろう。

もちろん様式美として、クラシカルなスタイルにはドラムブレーキが良く似合う、ということも理解できる。

けれど眺めるだけではなく、実際に走らせるとなれば話が違う。

大排気量バーチカルツインが生み出す『W』らしい走りを味わいつくすためには、安定した制動力を発揮できるディスクブレーキは必須の装備なのだ。

他にも、目には見えないけれどアシスト&スリッパークラッチが搭載されていることが素晴らしい。

この装備はアグレッシブな走りのためのものだと思われがちだけど、実は違う。

先のW1は、操作だけで握力が鍛えられそうなほどに重いクラッチだったけれど、新型W800シリーズは、この機構のおかげもあり、比較にならないほどにクラッチ操作が軽いのだ。

これはタレントの平嶋夏海さんのような女性ライダーにとっては、特に嬉しいこと。

『クラッチは第一印象だと少し重く感じたんですけれど、走っているときは全然気になりませんでした。もしアシスト&スリッパークラッチが無かったら、と考えると恐ろしいですけどね(笑)』

男性だって同じことだ。

クラッチが重くて嬉しいことなんて、実のところ何ひとつ存在しない。

『それと、足つきに不安がある女の子だと急な強いエンジンブレーキってバランスを崩しそうで怖いんです』

クラッチ操作が軽くなるだけじゃない、過度なエンジンブレーキが掛かったときのセーフティとしても機能するアシスト&スリッパークラッチ。

それがクラシカルな『W』スタイルの中に、ひっそりと仕込まれている。

新型W800シリーズは安全と快適を満たした上で、味わいさえもを創出する。

そのうえで乗り手を選ばず、いろんなライダーに『楽しい!』を感じて欲しいという願い。

新型W800シリーズには、作り手のそんな想いが込められているとしか思えない。

  それでも『W1』は色褪せない
でも、だからと言ってW1の存在感が薄れることは決して無い。

短い試乗の中でも、忘れられない印象が残っている。

やはりW1は原点として、どこまでも唯一だった。

「クラシカルなスタイルが好き!」という平嶋夏海さんとっても、W1のスタイルは特別として感じられるし、ボクがいちばん最初に驚いたエンジンフィーリングも、W1でしか味わうことができない。

それは間違いのない事実。

W1はどこまでもいっても別格の存在、ということなのだ。

  だからこそ最新の『W』は正しい
だから名車W1と新型W800シリーズを同じ土俵で比べることに、意味は無いのかもしれない。

それでも両車を同時に乗れる、今回のような奇跡にめぐり合えたことで、思うことがある。

新型W800シリーズとW1は違う。

だけど、お世辞ではなく、根底には同じものが根付いていると感じるのだ。

ただ、アプローチは逆だった。

当時の最高性能を第一義とする「強さ」の中に「優しさ」を感じたW1。

それに対して新型W800シリーズは最新技術によって「優しさ」の中に「強さ」を潜ませた。

でも、そのおかげでボクたちは、安全・快適にモーターサイクルのある暮らしを愉しむことができる。

新型W800 STREET/CAFEの在り方は、これで正しいのだ。

カワサキ『W』の名に恥じない味わいを秘めながら、モーターサイクルならではの『自由』を謳歌できる信頼性も併せ持つ。

もし貴方が今、安心して楽しめるテイスティなモーターサイクルに興味があるのならば、W800 STREET/CAFEは最良の選択肢のひとつだと思う。

その理由は、新型W800シリーズが今までにないレベルで、味わいと高性能をバランスさせることに成功しているからだ。

カワサキ『W』は今尚、新しい技術を取り込み続け、進化を止めない。

じゃあ、その技術は誰のために?

それはきっと、モーターサイクルを愛するすべてのライダーのために。

そしてきっと、貴方のようなライダーのために。

そのために新型W800シリーズは、今日のカタチに進化したのだ。

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